コンクリートクライシスへの備え

 我が国では、1945年以降の戦災復興から1970年代の高度成長期にかけて、道路をはじめとする社会資本の整備が急速に図られ、特にコンクリート構造物は、名神高速道路や新幹線に代表されるように、凄まじい勢いで建設されてきました。

 その量といえば道路、ダム、港湾、空港、建築物など土木関連では今や100億㎥を超えると言われるほどに達し、農政関連においても用排水施設など40万kmを超えるストックとなっているといわれています。

 これらのコンクリート構造物は、経年と共にその耐用年数を経過しつつありますが、当時のコンクリート技術の未熟さや、その後の酸性雨など環境条件の悪化もあって、コンクリート構造物の劣化が想像以上に進んでいるのが現状であります。

 例えば、橋梁について言えば国土交通省の調査によると、耐用年数50年を迎える橋長15m以上のコンクリート橋について、2011年には全橋梁の12%であるのに対し、2051年には約60%を占めるとの推計がなされています(岐阜県に於いては2012年では10%、2032年には55%と推計されています(日経コンストラクション))。

 現在、国・地方とも財政状況はひっ迫しており、公共事業予算も大幅な削減を余儀なくされています。加えて、地球環境問題の観点から、資源の再利用、廃棄物の削減も求められています。さらには、かつての「開発・建設の時代」から既存ストックの「管理・保全の時代」へと移行すべき時期を迎えていると言っても過言ではありません。

 これらの社会情勢から、既存の構造物を補修・補強しながら可能な限り長期間にわたって有効利用していくことが今我々に求められており、一方では、ライフサイクルコストの低減に向けてのアセットマネジメントも重要視されてきています。

 このような現状を背景に、今後はコンクリート構造物の補修・補強等の維持管理が公共事業の大切な分野を占めてくるものと思われますが、公共コンクリート構造物の建設に関わってきた建設業者の責任として、構造物の劣化に対する保全技術に積極的に関与する責務があると思われます。

 以上の事から、本趣旨に賛同する関連会社を構成員として、ここに「岐阜県アセットメンテナンス協会」を設立し、あらゆるコンクリート構造物に対する補修・補強・更新の技術の取得および向上を目指し、各種研修会の実施や外部講習会への参加を行って自己研鑽に努めつつ、受託によって実績と経験を積むことで、社会資本の劣化に着実に対処し、もって地域社会の福祉の増進に寄与しようとするものであります。            会長 小池 秀治